僕は手の中の箱に入ったビンどうしが当たってカチャカチャと鳴るあの音と微かな手応えが好きだ。
中の液体の揺れのせいで少しノイズが入る。
カチャカチャ
僕の中学の理科の先生はいつも実験用品の入った青い箱を教室まで持ってきていて、たまに実験をしてくれた。
青い箱から出てくる実験のオモシロさは退屈だと思いこんでいた学校の授業でもエキサイティングなのだってあるんだなあと思えるものだった、教室のなかで燃える炎なんかは意味なくゾクゾクした。
授業がおわるとたまに先生は僕にその青い箱を職員室まで運ばせた、カチャカチャと例の音、微かな手応え。
それから随分とたって僕はその音と微かな手応えに再会した。
田中商店の三代目に「絶対に落とすな」と念を押されたその箱は運ぶとカチャカチャと鳴った、あの微かな手応えも感じた。はっとして箱を開けて見る。
グリーンキラー
と書かれたラベルを貼った瓶がズラリと並んでいた、瓶には緑色の液体がトプンと入っていた。
日用品というのはコーヒやビカクシダとはちがい、ほとんどの大人は買ったことがある。いやいや、遠慮してほとんどって書いたけどきっと全員、全ての大人は買ったことがあるだろう。
なんなら”はじめてのおつかい”が日用品になることだって珍しい事じゃないよね。
なんてことないさ と。
そうやって日用品達は掃除や暮らしの便利と家族の思い出を担っているのである。僕はそんなユルめな日用品達に油断しまくっていた。
グリーンキラー
はじめまして。
田中商店の三代目をして絶対に落とすなと言わしめる孤高の存在、どうやらカチャカチャすらもデンジャラスであるらしい。
グリーンなんて平和の象徴みたいなカラーだが瓶越しに見る緑色の液体はグロテスクでライトな文字でうじ殺しと、物騒な文言をかるくフワッと書いてあるのが逆に負の領域の仄暗い深さを感じてしまう。
掃除とか便利とか、家族の思い出とか甘っちょろいものではない、はっきりいって明確に殺し屋である。
「ぼく、ドク。」(香取慎吾)
日用品にもデンジャラスでエキサイティングなやつもいるのだ。
“はじめてのおつかい”で子供たちには頼めない、頼むわけにいかない。
なんてことがありすぎる、思い当たるフシがありすぎる。
のんきに歌っているbbクイーンズも真っ青…じゃなくて真緑になって逃げ出す勢い。
だがしかし、
グリーンキラーの奏でるカチャカチャと微かな手応えは教室のなかで燃え上がる理科の実験の炎のように、死刑囚が描いた抜けるような空の絵画のように、邪道の変則DDTのように。
僕には何故か怖ろしく心地が良い。
しらんけど。
ちなみに大人になってから近所のスーパーで実験好きなあの理科の先生を見かけたんたけど、その時の先生は喉元までびよーんと鼻水が垂れていてエキサイティングな風貌でした、なんかすごく怖くて不快だったので声はかけてません。
古い例えは検索各々で。
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